伊勢崎市の伝統産業・伝統工芸

更新日:2024年03月06日

伊勢崎市の伝統産業

伊勢崎銘仙の歴史

上毛かるたの「銘仙織出す伊勢崎市」で有名な銘仙とは、絹を原料としその風合いを活かした平織物のことを指し、伊勢崎地域以外にも桐生、足利(栃木県)、秩父(埼玉県)、八王子(東京都)などが有名で、これらの関東地方の製品の総称として使われてきました。
伊勢崎の織物の歴史は古く、6世紀まで遡ることができ、麻で紡いだ織物が古墳から出土されたことが確認されています。

また、世界遺産である田島弥平旧宅からも分かるように、伊勢崎地域は養蚕地帯として栄えた歴史があり、厚手で丈夫な太織が農家を中心に自家用として織られてきました。主に自家用として織られていた太織りですが江戸時代後期に織物としての商品化が進み、明治13年(1880年)に伊勢崎太織会社という組織を設立するに至りました。そして、この頃より、銘仙と呼ばれ始めることになりました。銘仙という総称の由来ですが、経糸の数が多く筬目(おさめ)が千ほどもありそうな緻密な織物であることから、「目専」、「目千」と呼ばれ、そこから転じて「めいせん」となったとも言われています。

明治時代の後半になると、動力式の織機が導入され一部が工場化されるなど生産量を伸ばしていきましたが、伊勢崎銘仙は複雑な模様や風合いを特徴としていたため、高機による手織り生産が引き続き行われていきました。大正から昭和初期にかけて、銘仙生産量は全国の半分を占めるまでに至り、伊勢崎銘仙の黄金期と呼ばれるまでとなりました。

その後、第二次世界大戦では外国産の原料について厳しい統制が敷かれたことで、国内の原料を使う銘仙にとっては追い風となり、売り上げを伸ばすことになりました。終戦後も、復興における主要産業が紡績であったため、売り上げを伸ばしましたが、その後は生活様式の欧米化により和装から洋装へと変化していく中で、需要が減退し徐々に売り上げや生産量が減少していき、生産者も減っていくことになりました。

時代の流れで和装から洋装が主流となる中でも、織物工業組合(織物協同組合)主導のもと新技術の開発や後継者問題に取り組むなど銘仙文化を継承していく活動が行われてきました。その活動の功績により、伝統工芸品としての高い評価を受けながら伊勢崎銘仙は現在に至ります。

伊勢崎銘仙の現在

織物工業組合(織物協同組合)のもと、銘仙文化の承継活動が行われてきましたが、生産者の高齢化や後継者問題は困難を極め、銘仙の新たな製造については危機的状況にあります。しかしながら、毎年3月に開催される「いせさき銘仙の日」のイベントでは、現存する銘仙を着用したファッションショーの開催や、銘仙の生地を再利用して手さげ袋や名刺入れなどの小物に加工して販売するなど、今なお伊勢崎銘仙としての存在感と文化を示しています。

伊勢崎市の伝統工芸

日本の伝統的工芸品

伝統的工芸品とは、一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会によると、『一般の「伝統工芸」などの呼び方とは別に、「伝統的工芸品」という呼称は、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」で定められたもので、「的」とは、「工芸品の特徴となっている原材料や技術・技法の主要な部分が今日まで継承されていて、さらに、その持ち味を維持しながらも、産業環境に適するように改良を加えたり、時代の需要に即した製品作りがされている工芸品」という意味であり、経済産業大臣から指定を受けたもの』と定義されています。
なお、令和5年10月現在、経済産業大臣が指定する「伝統的工芸品」は全国に241品目あります。

伊勢崎絣(いせさきがすり)

様々な模様の絣が集合した写真です。
鮮やかな赤色の絣の着物です。
絣の生地を使用した小物入れや手提げ袋です。

伊勢崎絣は昭和50年に通商産業大臣(現在の経済産業大臣)より伝統的工芸品として指定を受けました。伊勢崎絣とは、伊勢崎銘仙のことを指し、国の伝統的工芸品の指定を受ける際に「伊勢崎絣」の登録名で届出をしたため、名称が伊勢崎銘仙でなく「伊勢崎絣」となっています。国の伝統的工芸品については下記のリンクをご参照ください。
なお、伊勢崎絣には定義があり、下記の技術又は製織を満たしている必要があります。

  • 先染めの平織とすること。
  • かすり糸は、たて糸及びよこ糸又はよこ糸に使用すること。
  • かすり糸のかすりを手作業により柄合わせし、かすり模様を織り出すこと。
  • かすり糸の染色法は、「手くくり」、「板締め」又は「型紙なっせん」により、使用する糸は、生糸、玉糸若しくは真綿のつむぎ糸又はこれらと同等の材質を有する絹糸とすること。

伊勢崎絣は織物の作業工程が細かく分かれ分業制となっており、織物の種類にもよりますが10以上の工程に分類されます。この分業制により、伊勢崎絣は質の高い織物としての評判を広めてきました。
なお、伊勢崎絣の作品については、下記の伊勢崎織物協同組合・伊勢崎織物工業組合にて保管されています。

住所
  • 郵便番号 372-0055
  • 伊勢崎市曲輪町31番地1
  • 伊勢崎織物協同組合・伊勢崎織物工業組合
  • 電話番号 0270-25-2700(土曜日・日曜日・祝日は休館)

群馬県ふるさと伝統工芸品

群馬県では、郷土の自然とくらしの中で育まれ、受け継がれてきた優れた伝統的な工芸品を「群馬県ふるさと伝統工芸品」として指定しています。
また、指定することによりその名声を高め、伝統的工芸品産業の振興を図るとともに、県民生活に豊かさと潤いをもたらすことを目的としています。指定は平成5年9月6日に制定した「群馬県ふるさと伝統工芸品指定要綱」に基づき審査され、以下の条件を満たすものとなっています。

  • 主として日常の生活の用に供されるものであること
  • 伝統的かつ優れた技術又は技法により製造され、相応な品格及び造形を備えたものであること
  • 製造工程の主要部分が手工業的であること
  • 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること

伊勢崎絣(いせさきがすり)

伊勢崎絣は、平成5年に県知事から群馬県ふるさと伝統工芸品として指定を受けました。群馬県ふるさと伝統工芸品の指定を受ける前に、国の伝統的工芸品の指定を受けているため、伊勢崎銘仙ではなく、「伊勢崎絣」の名称で統一されています。

伊勢崎絣の作品については、下記の伊勢崎織物協同組合・伊勢崎織物工業組合にて保管されています。

  • 郵便番号 372-0055
  • 伊勢崎市曲輪町31番地1
  • 伊勢崎織物協同組合・伊勢崎織物工業組合
  • 電話番号 0270-25-2700(土曜日・日曜日・祝日は休館)

伊勢崎桐箱

陶芸品を保管するための桐箱です。
前蓋タイプの桐箱です。
刀を保管するための桐箱です。

伊勢崎桐箱は平成20年に県知事から群馬県ふるさと伝統工芸品として指定を受けました。
桐箱の素材である桐は、防虫効果のある成分(パウロニン、セサミン等)を含んでいるため、美術品や宝石、衣類等を保管するための材料として適しています。防腐効果のあるタンニンという成分も多く含んでいるため腐りにくく、湿気の強い日本の気候にも適しております。
また、保管品を湿気から守るだけでなく、空気が乾燥すると予め吸収した湿気を放出し、湿度を一定に保つ働きを持ち合わせており、湿気や乾燥に弱い繊細な品物を保管するために重宝されています。
加えて、桐は樹木類の中でも極めて軽量であり、また縮みにくい性質を持っているため、品物を密閉し保管する箱として適しており、桐と箱の組み合わせは大変理にかなったものであることが言えます。この他にも熱伝導率も低く耐火性にも優れているという特徴もあり、火事の程度にもよりますが桐箪笥の中に保管されていた衣類が燃えずに済んだ等の事例もあるほどです。
このように日本の気候にも適し、多くの長所を持つ桐を材料に作られる桐箱は、陶芸品や美術品、鉢用箱や軸箱など、保管する品物の需要に即した形で作られています。
群馬県内には桐箱を専門に製造する業者が少ないことと、高い技術を持ち合わせていることから、関東近県だけでなく全国から注文を受けています。

製造者情報
  • 郵便番号 372-0801
  • 伊勢崎市宮子町3342番地
  • 関口桐箱店
  • 電話番号 0270-23-2119

上州竹矢

上州竹矢
上州竹矢

上州竹矢は令和4年に県知事から群馬県ふるさと伝統工芸品として指定を受けました。

現在、競技としての弓道を含む多くの場面で、カーボンやアルミを原材料として使用し、工業機械により製造された矢が使用されています。このような状況でありながら、上州竹矢は文字通り竹を使い、手作業で加工を行い製造されています。製造者が自ら原材料の「シノダケ」を群生地から切り出し、それを数か月かけて乾燥させ、長さや節の間隔を揃え、表面の突起を削り取り、専用の炉で熱を加え歪みをなくすという工程の全てが伝統的な手作業であり、このような加工法には100年以上の歴史があるといわれています。

原材料である竹の個性を見極め、一本一本丁寧に加工が施された矢からは、化学素材とは違った温かみや力強さを感じることができ、日本国内だけでなく、海外の弓道愛好者からも高く評価されています。

製造者情報
  • 郵便番号372-0801
  • 伊勢崎市宮子町3630
  • 株式会社高橋宗高弓具店
  • 電話番号0270-25-1711

伊勢崎括り絣(いせさきくくりがすり)

伊勢崎括り絣は令和6年に県知事から群馬県ふるさと伝統工芸品として指定を受けました。

あらかじめ染色させた糸を織り合わせて文様を表現する織物のことを絣といいます。伊勢崎括り絣は、絣で織られた織物のうち、括りという技法で染色を施した製品のことを指します。

括りとは、染色工程において、ビニールテープ等で原材料の糸を縛り、染料の浸透を調節する技法のことです。糸の縛りが緩くても、あるいは強すぎても正確に柄を表現することが出来ない為、繊細な技術が必要とされています。

絣や括りという技法は、製作過程において熟練の感覚的技能による微調整の要素が多く、機械では代替できないため、今もなお伝統的な手作業を必要としており、伊勢崎括り絣についても伝統的な手作業が工程の大半を占めています。

細部にまでこだわり、丁寧な作業が施された作品は織物関連の展覧会などでたびたび紹介されるなど高く評価されています。

製造者情報
  • 郵便番号372-0031
  • 伊勢崎市今泉町一丁目1393-3
  • かすり工房 さいとう
  • 電話番号0270-25-1148

群馬県ふるさと伝統工芸士

群馬県ふるさと伝統工芸品の製造に従事している者のうち、高度の伝統技術・技法を保持する者を群馬県ふるさと伝統工芸士として認定しています。
また、認定されることにより、その社会的評価を高め、伝統技術・技法の維持向上と技術習得意慾の高揚を図り、後継者の確保と工芸品の次代への継承に資することを目的としています。
認定は、平成11年7月9日に制定された「群馬県ふるさと伝統工芸士認定要綱」に基づき行われ、以下の条件を満たすものとなっています。

  • 群馬県ふるさと工芸品の製造に関する高度の伝統技術・技法、知識を有し、その維持及び発展に努めていること。
  • 群馬県ふるさと工芸品の振興に係る事業の推進等に貢献しており、かつ今後も貢献できること。
  • 後継者育成に熱意のあること。
  • 伝統工芸士にふさわしい高潔な人格を有すること。
  • 経済産業大臣から指定を受けた伝統的工芸品の製造者でないこと。

伊勢崎市では現在、4名が群馬県ふるさと伝統工芸士として認定されています。

  • 関口 勝三郎(伊勢崎桐箱)
  • 関口 昌伸(伊勢崎桐箱)
  • 高橋 伸弥(上州竹矢)
  • 齋藤 定夫(伊勢崎括り絣)

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この記事に関するお問い合わせ先

産業経済部商工労働課 商工振興係
〒372-8501 伊勢崎市今泉町二丁目410番地 伊勢崎市役所北館2階
電話番号 0270-27-2754
ファクス番号 0270-23-7382

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